😺俳句の旅
「叱られて目をつぶる猫春隣」
久保田万太郎
この一句には、猫の愛らしい仕草とともに、春の気配がほのかに漂っています。叱られているはずなのに、目を閉じてじっとやり過ごす様子は、どこかユーモラスで思わず頬が緩む光景です。
猫は言葉を持たない分、その表情や態度で多くを伝えます。反省しているのか、それともただ受け流しているのか。その曖昧さが、かえって親しみやすさを感じさせ、見る人の心を和ませます。
「春隣」という言葉が添えられることで、厳しさよりもやさしさが前面に出てきます。寒さの中にも春の気配が近づいている——そんな季節の移ろいが、叱る側の気持ちまでどこか穏やかにしているようです。
日常の何気ない一瞬を切り取りながら、季節と感情を重ね合わせる。このさりげない視点こそが、俳句の魅力であり、日本語の奥深さを感じさせてくれます。



